マーケティングは「想像力」と「思いやり」

11.16
2018

(c)ぱくたそ(たけべともこ / つるたま)

アジャイルメディア・ネットワークに戻りました
https://snowadays.jp/2018/11/3627

こちらのエントリで書いた通り、AMNに出戻りました。
AMNを離れて何をしていたのか、なぜ戻ったのかってあたりは↑のエントリで書きましたが、肝心の新サービスのことと、なぜその新サービスに共感したのか、ってあたりを少し整理しようと思います。

私自身のマーケティングに対する姿勢・考え方の方向性も含めてまとめますが、私は別に「マーケター」を名乗ったこともないしこれからも名乗ることはないであろう素人ですので、その辺は生温く見守っていただければ幸い。

マーケティングって何だろう?


何かを作り、それを売る。それを買う人がいて、使う人がいる。
この「市場」と「消費」のサイクルを活性化させること。
市場(マーケット)を創造するというのが、マーケティングの定義だそうです。(受け売り)

マーケティングにはいろいろな役目がありますが、その中でも最も重要な使命は「情報を届けて、“生活を豊かにすること”」だと、個人的には考えています。

例えば、新商品の情報を、それを必要としている人に届けることを考えた場合。

車を買い換えようと思っている人に、とある新車の情報を届ける・・・
これだけでは、その人の生活は豊かになりません。
その人の家族構成とか趣味嗜好を背景として、なぜその車があなたの生活にフィットするといえるのか。
その車が日常にやってくると、どんな生活が訪れるのか。
さらに、その未来の生活をもっと楽しむための情報は?
相手を「車が欲しい人」とだけとらえるのではなく、その人の環境や課題にまで踏み込んで提案できることで、単に情報を届けるだけでなく生活を豊かにするところまで可能になります。

また、新たなニーズを顕在化させ、選択肢を増やすことで生活が豊かになるよう配慮することも大切。
車を買い替えようとしている人のライフスタイルを考えると、実はカーシェアのほうがコストメリットがあるようなケースであれば、新車情報だけでなくシェアリングの情報やメリットも伝える。
もちろん、車を所有することのメリットもあるはずなので、それも伝える。
そうして選択肢を与えることで、本人がより良い選択をできるようにしたいな、と。

こういうところまで踏み込んで考えることが、これからのマーケティングには求められていくのではないかなと。

コンテクスト(文脈)とストーリー

「情報を届けて、生活を豊かにする」ことを考えると、例えば商品情報を伝える場合でも、その商品のコンセプトや、機能・テクノロジーなどのスペックを情報として伝えるのではなく、例えば「こういうライフスタイルの人がその商品を使うとこうだ」、とか「こういう趣味嗜好に人にはこの商品はおすすめだ」とか、「日常で使うことにおけるTips、ハック」とか、そういう情報が大切になります。
背景や前提、つまりコンテクスト(文脈)が大事だということです。

また近年、マーケティングにおいてはブランドが発信する「ストーリー」が重要だといわれています。
それはブランドが一方的に語る創業秘話とかそういうことではなくて(ブランドのビジョンやミッションを語るのは悪いことではないです)、あくまでもユーザーが主役となるストーリーのことです。

ここで注意が必要なのは、“ブランドが都合よく作り上げた”ストーリーではない、という点です。

イケメン俳優が演じる主人公が部活動の合間にスポーツ飲料を飲んでいたら、アイドルが演じるかわいい女の子が隣に来ちゃう、とか

クールでワイルド俳優が運転するミニバンに、モデル並みに綺麗な奥さんと可愛い娘が乗り込んでくるポイズン、とか

マスコミュニケーションの中でイメージ戦略として効果はあると思いますが、こういったストーリーは実際に利用しているユーザーの体験に基づいたストーリーではないため、本質的な共感は得られません。

「実体験にもとづくストーリー」これが非常に大切なポイントです。
リアル、自分事化、共感できる、実感・・・こういった文脈で「ナラティブ(narrative)」というキーワードもあるようですが、ググったらガンダムの記事しか出てきませんでしたw

これって、言葉で言うのは非常に簡単ですが、実践するのは難しいです。
例えば、商品やサービスを実際にいろいろな人に使ってもらい、その結果どうだったかというのをまとめたりする必要があるわけですが、多くの場合手間やノウハウ不足、予算不足などから「仮に****な人が使ったとしたら、おそらくこうだろう」というようなブランドからの仮説で終わっています。

クチコミ・マーケティングの誤解

基本的に、「実体験にもとづく商品ストーリー」というのは、ブランドから発信する情報には含まれていません。
ブランド側の人間は既にその商品に対して一定のバイアスが掛かっていますし、実際に商品を購入するのは、一般ユーザーです。
であるからこそ、一般ユーザーの声からストーリーを作り出す必要があります。
そこで、一般のユーザーの声を集めてこうしたストーリーを表現しようと、クチコミ・マーケティングとかソーシャルメディア・マーケティングのようなものが進化してきました。

クチコミの価値というのは、本質的には「ブランドからは発信できない情報」だから意味があります。その中身に価値があるということです。
しかしながら、現在に至るまでに多くのブランドはこの価値を誤解して、広告的な露出数(imps数、PV数、表示回数、再生回数、フォロワー数、いいね数・・・)に価値を求めてきました。
その結果、ブランドはクチコミを使って何をしているかというと、フォロワー十万人のユーザーに数十万円払って、ブランドで用意した100文字のテンプレート文をほぼコピペでツイートしてもらっています。
または、フォロワー数万人のユーザーに、ブランドが用意した「ハッシュタグ」をユーザーのセルフィーと共に投稿してもらうために、数十万円払っています。
これがいわゆる、インフルエンサー・マーケティングです。

これらは広く認知を取るため、露出量を増やすためには効果がありますが、それはあくまで「広告」であって、人々の興味を喚起するところまでが役割です。
興味を喚起した先で、実際に消費を生み出したり、それが生活の中で持続していくためには、もう一歩踏み込んだ情報を伝える必要があります。

「実体験にもとづく商品ストーリー」の魅力


「実体験にもとづく商品ストーリー」というものは、例えば商品の魅力を深く伝えるのに有効です。
新しく市場に商品が出る時でも、事前にサンプリングやモニターを通して体験させた利用者からヒアリングしたエピソードを組み合わせて、ストーリーを作っていくことができます。
このストーリーを商品販売時に有効活用することで、潜在層の購入意欲を顕在化させたり、購入検討者の背中を押したり、といった効果が期待できます。


また、より重要な効果として、購入者・購入検討者と商品の「ミスマッチ」を減らすという視点があります。
ミスマッチというのは、商品が購入したユーザーの期待に沿えなかった、満足しなかった、または商品の機能や仕様への誤解があった、といったケースです。
こうしたミスマッチが発生すると、返品やクレームの原因となり、ブランドとしてはサポートコストが増えます。
「実体験にもとづく商品ストーリー」を通して商品理解を深めてもらうことで、こうしたミスマッチを事前に防ぎ、総合的なコスト効率UPを実現します。


IoTなど、新しい市場を作ろうとしている商品や、職人・こだわり・伝統工芸のような商品の「セカンドラウンド(二巡目)」でも効果的です。
マーケティングのイノベーター理論で言うところの、「イノベーター」や「アーリーアダプター」層までは、商品のテクノロジーをアピールしたり、エッジのきいたコンセプトをうまく表現することで、クリアできるケースも多いです。
が、さあ二巡目、というタイミングで大きな壁があります。(いわゆる「キャズム(溝)」)

次の層である「アーリー・マジョリティ」は、単に商品のスペックを訴求したりコンセプトムービーを見せるだけでは、行動を起こしません。
自分たちのライフスタイルに取り入れることに価値があると証明されなければ、消費につながらないのです。
この壁を越えなければならない、つまり「セカンド・ラウンド」に、多くのブランドは苦労しています。
「キャズム(溝)を超える」という話ですね。
「アーリー・アダプター」まででは、せいぜい商品の普及率は16%。キャズムを超えて「アーリー・マジョリティ」にたどり着ければ、普及率は50%になります。

ここで重要なのも、実体験にもとづく商品ストーリーではないかな、と。

体験から商品ストーリーを生み出すために

具体的にどのような手法をもって「ストーリー」を紡いでいけばよいのでしょうか。
ユーザー(利用者やモニター体験者など)からエピソードを集めるというのは、もっともわかりやすい方法の一つです。
SNSの投稿やECサイトのレビューなどはこれにあたります。
特にSNSの発展により、この方法は実践もしやすくなりましたが、一方で個別のエピソードはそれだけではストーリーと呼べるほどの情報量・説得力がないという課題があります。
また、発信しているユーザーの顔が見えず、コンテクストも伝わりにくいです。
とはいえ、ブランドがSNSで集めたエピソードを都合よくまとめてコンテンツとして発信すると、せっかくの「利用者のクチコミ」が「ブランドが発信する情報」になってしまいます。

最初から「ストーリーを描ける、ライティング能力のあるライター」に商品を体験させてコンテンツを作るという方法もあります。
メディアによる編集タイアップや記事広告です。
クオリティの高い商品ストーリーを手に入れると同時に情報拡散も期待できますが、当然一定のコストが必要です。
また、コンテンツの中身にメディアの「編集」という名のバイアスが掛かる(または掛かっていると読者に色眼鏡で見られる)ことと、あくまでもそのコンテンツの帰属は出稿したメディアであり、ブランドがいつでも自由に利用できるわけではない、という点は注意が必要です。

新サービス「CATAPULT(カタパルト)」について


AMNで新しく始めた「CATAPULT」は、出店型のECモールです。ブランドはここに出店し、商品を販売できます。
CATAPULTでは、例えばブロガーやYoutuberなど、利用者目線で伝える力があるライターを「ガイド」として抱えており、彼らに販売前に商品を日常の中で体験してもらってストーリーを記事執筆、寄稿してもらいます。
この記事広告的なコンテンツづくりが、基本利用料の中で自動的についてくるサービスの一つです。
CATAPULTは、純粋な「メディア」ではなく「メディアの側面ももつECモール」ですので、寄稿されるストーリー記事に対する「編集」は必要最小限にとどめています。
執筆された記事はCATAPULTに寄稿されるため、CATAPULTに帰属することになりますが、出店したブランドに対してこの記事の二次利用を無償で許諾します。これも他の類似サービスではあまり見られません。

また、出品ブランドに対して、様々な形でのサポートも行います。
出品ページの構築など制作面はもちろんのこと、ガイドに商品を体験させる際の企画や、商品販売方法について他商品とのバルク販売や企業間コラボレーションも提案しています。

商品ストーリーを執筆する「カタパルト公認ガイド」という組織に関しても実は想いがありまして。
空前のインフルエンサーマーケブーム到来により、基本的に評価指標がリーチ数になっています。
ブログのアクセス数やYoutubeのCH登録数が少ない人、というのはそういう意味において価値が無いとされているわけです。

しかしながら、前述の通り本来の価値というのはそういうことではなく発信する情報のクオリティ、中身です。
読み手に伝わるライティングができる、映像を通して相手に分かりやすく伝える、そういうコンテンツを作ることに長けている人たちの中で、とはいえリーチ数はそこまで多くない、なんて人はすごくたくさんいるわけで(むしろリーチ数がすごく多いなんてのはごく一部の人々)。
そういう人たちにこそ、ガイドとして活躍してほしいと思っています。

「CATAPULT(カタパルト)」の2つの価値

CATAPULTの一つ目の価値は、「CATAPULTガイド」(=ストーリーを執筆できるライター)です。
彼らが商品を実際に利用し、体験したうえで執筆するストーリーは、ブランドにとっては時に商品開発のアイデアになり、商品の販促ツールとなり、カスタマーサポートの材料にもなります。
さらに、CATAPULTでは商品の販売機能も設けているので、ガイドが執筆した商品ストーリーを読みながら、その場ですぐに商品の購入もできます。

二つ目の価値は、「ノウハウ」です。
AMNでは、これまでに数多くのブランドとファンをコミュニティ化して運営してきました。
こうした実績の中で、様々な「商品体験」を企画し、ファンのクチコミを生み出してきた独自のノウハウがあります。
CATAPULTガイドへの商品体験の企画や、より共感されるストーリーを生み出すための、商品販売の企画などを、独自ノウハウを駆使してサポートします。

「でも、お高いんでしょう?」

CATAPULTでは、なるべくスモールビジネスや中小企業も参加しやすいように、サービスを利用するためにかかるコストは「販売手数料:30%」のみとしています。
一般的なECモールだと、マージンはだいたい10%~15%ですので、それと比較すると高いように見えるかもしれませんが、この差額の中で記事広告が含まれています。
完全な成果報酬モデルです。初期費用も、月額固定費も、手数料の最低保証設定もありません。
作成された記事の二次利用もずっと無料で可能です。

商品が1つも売れなければ、1円もかからないので、リスクフリーで始められます。

詳しいことはこちらのサービス紹介サイトで。

CATAPULT|サービス紹介サイト

「想像力」と「思いやり」

私は典型的なミレニアル世代です。
パソコン、インターネット、ケータイ、スマホ。BBS、チャット、SNS、メール、SMS。
目まぐるしくかわる情報の形、伝え方を経験してきました。

昔から、情報を伝えること・伝え方に興味があり、これまでにコンテンツ・広告・ソーシャルメディア・放送局・ハードウェアと経験してきましたが、色々な情報の伝え方・伝わり方を見てきたうえで言えるのは、もちろん情報が誰にも伝わらなければ何も始まらないのですが、「どうやって伝えるか」ではなく「伝えたその先で何が起こるか」、それを想像するということがすごく大切だと思います。ようは、想像力が求められます。

情報を伝えた先で、届いた人がどう感じるか。
その人が情報をもとに何かアクション(買う・使う)した時に、何が起きるか。
当然、その想像した未来をポジティブなものにしていく必要があります。
生活が豊かになる。社会がよくなる。そういう新しい価値を創造する。

マーケティングって「人助け」のようなものだと思うんですよね。
想像力を働かせて、相手を思いやる、そんなマーケティングを実践することが大切。

最後に

ちょっと話がそれますけど、私が仕事をするにあたって常に立ち返る原点は「子供たちのために何を残せるか」です。
お金を稼いで日々暮らしていくというのは前提としても、仕事を通して何を達成すべきなのか、なんのために働くのか。

子供たちは、幸か不幸かこの世の中に生まれてきたわけです。
事件もあれば事故もある、災害もあるしテロもある、あげくひとりひとりが生きづらく、社会制度としても色々なしわ寄せが若い世代の負担としてのしかかるような、そんな世の中に。
であれば、せめて大人として働いている身として、少しでも何か残したいなと。
言ってることはずいぶんと大仰ですが、別に大したことをするというわけではなく、何かを企画する・考える時の起点をどこに置くか、ってはなしですけど。

例えば転職を考えたときにも、大企業だけを相手にしたリッチなマーケティングとか、非効率の名のもとに対象を排除するアドテクとか、もはや利用者の意識の外で行われるビッグデータ活用とか、そういうのに興味は持てませんでした。

そんなわけで、別に「CATAPULT」が私の考え方を体現する方法の全てだとは一切思っていなくて、あくまでも一つの形です。
これから、もっと色々な形でチャレンジしてみたいですね。

基本的にこういう理想論的な考え方って、皮肉なのは、ビジネスが拡大していけばいくほど希薄になっていきます。
「綺麗事じゃ食っていけないよ」ということですね。
まあ、それもごもっとも。

タモリ倶楽部でおなじみの盛運亭

あ、この間盛運亭のラーメン食べてサービスの成功を祈願してきました。だから多分大丈夫。

世の中はこれから、社会の中で圧倒的な多様性を皆が受け止め、お互いに向き合っていかなければならない方向に向かっているので、情報を伝えた先を想像する、相手の立場に立って考えながらコミュニケーションをとるという考え方は、ビジネスでも日常でも、あらゆるシーンにおいて当たり前に求められることじゃないかと思います。